自由民主党 衆議院議員 吉野正芳(よしのまさよし) 

復興大臣をおえて

 私は、平成29年4月の復興大臣拝命以来、1年5ヶ月余にわたり在職いたしておりましたが、この度退任することとなりました。「現場にこそ課題と解決のヒントがある」という考えのもと、延べ111回にわたり、被災地や全国26か所の生活再建支援拠点を訪問し、被災された方や支援をいただいている方の声を直接伺ってまいりました。このような訪問を通じて、地震津波被災地域では、生活インフラの復旧はほぼ終了し、住まい再建も、今年度で概ね完成する見込みとなるなど、ハードを中心に復興が着実に進展してきたことを実感いたしました。

 一方で、復興のステージの進展に応じて、ソフト面の課題に対応していく必要があると強く感じてきたところであります。そのため、避難生活の長期化に伴う見守りや、心身のケア、コミュニティづくり、「心の復興」、そして被災者支援に携わる方への支援などのソフト支援に注力し、地域や被災者のニーズにきめ細かく対応してまいりました。また、福島における原子力災害被災地域では、避難指示が解除された地域において、小中学校が再開するなど、生活環境の整備が進みました。

 平成29年5月には改正福島復興再生特別措置法が成立いたしました。この改正福島特措法に基づき、帰還困難区域における「特定復興再生拠点」について、計画策定を進めてきた6町村全ての計画を認定いたしました。「たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除する」との決意のもと、まずは、認定された特定復興再生拠点の整備をしっかりと前に進めていくことが大切です。

 また、「福島イノベーション・コースト構想」の実現に向けて、関係閣僚会議を立ち上げるなど、抜本的に推進体制を強化いたしました。

 平成29年12月には、復興庁が中心となり「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定し、政府一体となって風評の払拭に全力で取り組んでまいりました。私自身、PTAの全国大会に3回参加し、福島県への教育旅行の回復に向けた協力や放射線に関する理解の促進をお願いしてまいりました。また、先日のワールド プレス ブリーフィング レセプションや昨年の米国訪問、去る9月初句のフィンランド・アイスランド・英国訪問などを通じて、海外に対する情報発信にも取り組んでまいりました。

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、「復興五輪」として、復興しつつある被災地の姿を国内外に発信する絶好の機会であります。復興の後押しとなるよう、引き続き復興庁としても、被災地などと連携した取り組みを進めることを期待いたします。

 復興・創生期間も残り2年半となりました。2020年度末までに、できることは全てやり遂げるという気概を持って、被災地の復興に全力で取り組む必要があります。また、福島の復興・再生には、中長期的な対応が必要であり、復興・創生期間後も国が前面に立って取り組んでいく必要があります。復興・創生期間後も復興の進め方については、先般公表された与党第7次提言においても、「検討を始めるべき時期を迎えている」旨、御提言をいただいております。現在、3県を通じて、事業の進捗状況を確認しているところです。今後、県や市町村と丁寧に意見交換を重ねながら、ポスト復興庁で対応していく課題を整理していかなければなりません。その際には、被災地の声に耳を傾け、現場の実情をしっかり把握してもらいたいと考えております。

 今後とも、現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら、復興を加速していく復興庁であることを期待しております。

      平成30年10月2日

                          前復興大臣      
                          衆議院議員 吉 野 正 芳